孤独部の日誌

名古屋とサウナとひとり旅

「天気の子」感想 〜風景描写がすごい

「天気の子」を観た

先日、新海誠「天気の子」を観に、名駅のミッドランドスクエアシネマに行ってきた。

金曜21:25からのレイトショー。連れが当日予約してくれたが、ほぼ満席だった。映画館で映画観るの、久しぶりだな。

まだ観てない人向けの感想(ネタバレ無)

風景描写がめっちゃキレイで迫力がある!スクリーンもデカいし音もデカいので、映画館で観てよかった、と思った。

ストーリーに関しては、「新海誠、だんだん話づくりも上手くなってるな」と思った。前作「君の名は。」に比べれば断然クオリティ上がった。

正直、前作は「ないわー」と思った覚えがある(もうあまり覚えてないけど)。だが、今作は気になることはあるけど、まだ受け入れられる。というかそれをうわ回るだけのよさがあった。共感する台詞もいくつかあったけど、何より風景描写に説得力があった。

ターゲットはやはりティーンという感じで、ぼくのような「秒速5センチメートル」好きなおっさんにはお勧めしない。ティーンのときだったらより深く没入できたかも。

ネタバレありで詳しい感想

とにかく風景描写がよかった。

一番印象に残ってるのが、花火の空撮カット。あがる花火を空撮するようにカメラワークしてく。花火が球体状なのだとはじめて実感できた。「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」でこのカット欲しかったな……!

あと、雨に沈んだ東京を俯瞰した景色。やはりあのクオリティで描写されると、もうそれだけで説得力がある。

ストーリー面は、大枠は好き。

まず天気の話ってのがいい。身近で、それでいてふだん強く意識することはなくて、ときに大きな災害にもなるし、美しい景色を見せてくれる。風景描写の美しい新海誠作品には、ぴったりなモチーフだ。

はっきり言ってセカイ系で、こういうのは作り込みが甘いとどうしてもチープで子ども騙しな話になりがちだけど、「たかだか100年程度の観測で、天気のことは分からない」というような一言が登場したことで、設定にただのセカイ系にまとまらず、もっと大きなものに委ねることができ、説得力を得れていたように感じた。とはいえその力は台詞だけでは足りず、やはりあの風景描写あっての説得力だと思う。

「晴れ女」の陽菜がちゃんとかわいいのもよかった。メインキャラクターはわりとよかった。

が、一方で敵役を引き受けた警官たちはキャラが浅い。あれなら名のない役でよかったのに。クライマックスでただの敵でしかないのに、そこまで思わせぶりな役にしてしまったのでもったいなかった。キャラに対して愛がなく感じてしまう。陽菜以外の人物(特に世話になったおじさん)に対しても、ラストの後日談的なパートがあるおかげで救いがあるものの、扱いがさびしい。主人公とヒロインしかキャラクターが生きておらず、弟くんだけがアニメ的なキャラづけのおかげで、結果的に生きたキャラであり続けられた、という印象。

新海誠は根本的に、風景やモノに興味があっても、人や生き物には興味がないんだろうな、と考えると納得がいく。無理に描かなくていいのになー。「秒速〜」はとことん人を描かなかったのがよかったし、「君の名は。」は得意でないはずの人を描くことばかりしていたのがよくなかった印象がある。今回は、風景描写がとっても多かった分よかった。

物語のディテールに関しては気になることが多々あるものの、それをうわ回る圧倒的な風景描写があるから、とてもおもしろかった。絵のよさがこれほど説得力に繋がるのか、と感銘を受けた。

東京の街を俯瞰するカットはもちろん、街中の風景もすごくいい。引きのショットが多かった気がする、非常階段のところが印象的。引きの絵だと建物のリアリティがすごくて、「彼らはいま東京の街中にいるのだ」ということを感じられる。

陽菜の自宅がよかった。あとラブホの部屋の中。緻密に書き込まれているからか、リアリティを強く感じることができた。あの絵の中を冒険するだけでたのしい。現実のようにリアルで、現実より美しく描かれた世界。

クライマックスの、「雨が降り続ける世界になった」というのが今作のストーリーで一番思いきった、肝だと感じた。

それまで現実の延長線上にあった世界だったが、そこから物語は完全にフィクションの世界に入り込む。「雨が降り続ける東京」で、それでも人々がその街で生きていく、という様子は、物語の行き先を力強く感じられてよかったな。半端に元通りの世界で大団円とかじゃなく、ああいう方向に進んだのはすごい。そしてそれもやはり、力強く描かれた、雨に沈む東京を描ける風景描写の力のおかげだと思う。2人の恋愛がどうとかじゃなくて、それがよかった。

 

……と感想書きなぐって何日か経つ。細かい記憶が抜け落ちて、すごくよかったな〜という気がしてる。もう一度観たい。

観たタイミングが、今年の長い梅雨が明ける直前だったのもよかった。梅雨が明けてしまったいま、この世界は陽菜ちゃんがいなくなってしまった世界線なのかもな……なんて想像してしまう。タイミングよく今年の梅雨にこんな作品が観れたのは、作品の説得力を増した気がする。